第3章 財産開示手続

さて、前回の第2章では差し押さえようとした銀行口座が無くなっていることが分かりました。

ですがそこで諦めるほど甘っちょろくありませんし、ここまで進めて諦める訳がありません。徹底的に行きます。

 

本題

債務者の財産を調べよう

現在「債務名義は取得したけど差し押さえできる財産が分からないよ」と言う状態です。

この状態の時に使える手段は

1,財産開示手続

2,第3者からの情報取得手続

この2つがあります。

 

1,財産開示手続とは

これは開示義務者=債務者(KS)を開示期日に裁判所に呼び出して、今ある財産について言わせるといったものです。

これには特徴的な部分があり、場合によっては刑事事件化することが出来るのですが、それについてはまた後で書こうと思います。

 

2,第3者からの情報取得手続とは

これは割と最近できた制度で、たとえば銀行口座を調べたい場合、裁判所に「A銀行とB銀行とC信用金庫と…に聞いてみてください!!」と申し立てすると、裁判所が金融機関(第3者)に対して「債務者(KS)の口座とかある?」と質問して、金融機関に教えてもらう。そんな制度です。

ですが少し制約があったり、可能性がありそうなところに片っ端から質問するように申し立てするような制度ですが、質問先が1か所増えるごとに必要な予納金が比例して増えていくので、聞きまくればそれだけの予納金が必要になります。

 

今回の選択は…

第3者からの情報取得手続では予納金の高さがネックなので、今回は財産開示手続を選択しました。

ちなみに申立先は債務者(KS)の所在地を管轄する地方裁判所なので、名古屋地方裁判所 に申し立てします。

申し立て時にまた法務局に行き「不動産登記事項証明書」の取得もしました。

必要な書類等は裁判所で聞いてみましょう。

 

財産開示手続の送達

それで財産開示手続の申し立てにGOサインが出れば、まずは実施決定正本と言う書類が申立人と債務者(KS)の双方に送達されます。

ちなみに実施決定正本とは「財産開示手続を実施しますよ」と言うお知らせのようなものです。

 

それで申し立ての時に予納金を収めてあるので、債務者(KS)への送達が不送達となった場合は自動的に休日送達をしてくれたようです。

が、残念ながら2回とも「不在」で不送達でした。

 

付郵便送達するために調査

この2回で送達できなければ支払督促の時のように付郵便送達をするためにまた調査が必要になり、実際にそうなりました。

 

なのでまずは実施決定正本を持って名古屋市の区役所に行き住民票を取ったところ、前回と住所は変わっていなかったのでまた同じ場所を調査することになりました。

 

調査の結果…

調査をすると、ポストに郵便物は届いているのですが、ベランダから見るとカーテンはなく、インターホンは鳴らず、電気・ガスは止まっていました。

ここから債務者(KS)は住民票は移さずに引っ越したと考えられるというか、99%その状態です。

 

また別の送達方法

こうなるといくら何でも万事休す…

とはまだならず、こういった場合は公示送達が可能になります。

また新しい単語が出てきました。

 

公示送達とは

住居所の調査をしても居所が知れない場合に使える方法で、裁判所の掲示板に書類を2週間張り出すことで送達が完了したと見なす送達方法です。

なにそれサイキョ―じゃん!

と思うかも知れませんが、その住所に債務者(KS)が住んでいないことを調査して、調査報告書を作成する必要があります。

調査の項目は第1章で付郵便送達のために調査したものとほぼ変わりありません。

付郵便送達のための調査は人が住んでいる証拠を集めましたが、公示送達のための調査は債務者(KS)が住んでいない証拠を集めて調査報告書を作成しましょう。

 

また、手続きによっては公示送達を使えないものもあります

例えば支払督促では公示送達の実施は不可能です。

 

公示送達の申し立て

さて、これで今の状況に追いつきました。

今の状況は公示送達のための調査が完了して、公示送達の申し立てを終え、今頃は裁判所の掲示板に書類が張り出されていることでしょう。

 

今後の流れ?

ここからは今後の流れです。

実施決定正本の送達が双方に完了した後、財産開示期日を裁判所が決定して、今度は「この日に裁判所に来なさい」と言った呼び出し状が送達されます。

 

財産開示手続の特殊な部分

でも、呼び出しに応じずに裁判所に行かなければ逃げれるんじゃないの?

と思うかも知れませんが、ここでやっと最初に書いた特徴が現れます。

詳しく書くと面倒ですが、

・財産開示手続の期日に出頭しない

・陳述の時に嘘をつく

といった行為は民事執行法違反(6月以下の懲役、または50万円以下の罰金)となり

告訴できます。

 

告訴と言うことは、今まで民事事件でしかなかったこの事件を刑事事件にすることが出来ます。

 

もっとも、警察が債権回収をしてくれる訳ではありませんが、場合によっては逮捕されます。

民事執行法は最近改正されたのですが、既にこういった状況で逮捕された事例もあるので、甘く見ているとかなり痛い目を見ることになります。

これが財産開示手続の特殊かつ特徴的な部分です。

 

あとがき?

2023年11月5日の時点でこれだけのことをしてきました。

現状ではまだ第3章は終わっていないのでキリが悪いですが、これが現状の全てです。

 

記事

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